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テリー・フロスト
Terry Frost(1915-)
 テリー・フロストは1915年10月13日、イギリス、ウォークウィックシャー、レミントンに生まれた。
 絵を描き始めたのは比較的遅く28歳になってからである。第二次世界大戦中、特別奇襲隊として
 従軍し、捕らえられてドイツの捕虜収容所での生活を余儀なくされていた時に絵筆をとるようになっ
 た。1945年、戦争が終わり、電気製品の卸売りの仕事をしながら、バーミンガム美術学校の夜間
 部に通う。キャサリン・クラーク と結婚するが、病気になり療養のためセント・アイヴスに引越し、夫
 婦で住み込みの召使いとして働く。このコーンウォール地方の美しい漁村には、画家ベン・ニコルソ
 ンと彫刻家バーバラ・ヘップワース 夫婦のアトリエがあり、若い芸術家たちが集まって一派となして
 いた。彼らの作品に共通する抽象的な形態と落ち着いた色彩は、変化に富んだセント・アイヴス の
 風土がもたらしたものである。フロストは、港に係留された小船の浮き沈みからインスピレーションを
 得、また海風と陸風のぶつかり合う動きを感じて、それらが絵の主題となった。具象から自然に抽象
 的な絵画表現に転じていったのである。1951年にバーバラ・ヘップワース のアシスタントとして仕
 事をした経験からも大きな影響を与えられた。その顕著な例が1950年代のレリーフ作品にみられ
 る。美術教師の職を得て、絵を描くことだけで生活できるようになったのは、1957年42歳を過ぎて
 からである。その後数多くの受賞と職歴を重ね、特に20年近く後継の指導に当たった、リーズ大学
 からは1981年名誉教授に叙された。