戻る
アレクサンダー・カルダー
Calder Alexander(1896-1976)
 ペンシルヴェニア州ロウントンに生まれる。祖父と父は彫刻家、母は画家であった。エンジニアとして
 実務についた後、あらためてニューヨークのアートステューデンツリーグで絵画を学んだ。1926年、
 パリに渡る。このころ、サーカスの芸人や動物たちを針金細工でつくり、ユーモラスに実演させて、パ
 リのアーティストの人気を得た。1930年、モンドリアンのアトリエで絶対的な原形と原色に遭遇して
 抽象芸術に目を開く。もとよりカルダーの本領は『モビール』(マルセルデュシャンが命名した)にある
 のだが、モンドリアンの禁欲主義を大気に解放させたおおらかさに加え、浮遊する平面がいつまでも
 かげりのない原形と原色をたずさえている様相に着目しなければならない。おそらくそれはマチスの
 純色をほうふつとさせ、アルプの純正な形態に連なっている。カルダーの『モビール』は20世紀のか
 かる巨匠の歩みと同じ線上に位置付けられる。一方カルダーは『モビール』に位置させて『動かざる』
 彫刻をつくった。これに『スタビル』という名称を授けたのがジャンアルプである。『スタビル』は大地に
 根をおろした剛直な構成体である。50年代の終わりからはカルダーは『スタビル』の制作に意欲を燃
 やし、スケールをますますモニュメンタルに拡大させることになった。あくことのない創造力とそのおお
 らかな感情の点では、おそらくミロひとりだけが匹敵するものと思われる。